「人は、なぜ不幸になるのか」
「人間の苦しみや痛みは、どこから生まれるのか」
この問いは古くから、さまざまな形で語られてきました。聖書の創世記に登場するアダムとエヴァは、かつて寿命も苦しみもない「天真爛漫」な存在でした。
しかし、彼らが禁断の果実を口にしたのは、単なる「罰」ではなく、宇宙の原理に逆らい、自ら苦い果実を手にしたという摂理を物語っています。自然の流れに逆らい、本来選ばなくてよかった道を選んだ結果、苦しみが始まったのです。
元神と識神:失われる「本来の自分」
古典中医学では、魂を二つに分けて考えます。
- 元神(げんしん): 人の本性。宇宙の意によって結ばれた、先天的な生命エネルギー。
- 識神(しきしん): 後天的に育つ意識。経験、学習、社会的な価値観や自我。
赤ん坊は「元神」で生きています。恐怖も損得もなく、自然のリズムそのものです。しかし成長と共に「識神」が発達し、「こうあるべき」という思考が強まると、元神の声は弱まっていきます。
悩みはここから始まります。本当の気持ちより期待や欲を優先し、我慢を重ねる。それが心身の負担となり、やがて不調として現れるのです。
「不怨人」:病の本質は心にある
古典中医の理論はこう断言します。「すべての病気は心からうまれる」と。
中国近代の教育家、王鳳儀(おうほうぎ)善人は、その教えを『不怨人(ふえんじん)』――「人を恨まず、原因は自分の中にある」という言葉に集約しました。
「病を、人のせいにするな。原因は必ず、自分の中にある」
解決法はシンプルです。言い訳のない、心からの謝罪。自分の過ちを認め、心と向き合った瞬間、病が一気に好転する例を彼は数多く残しました。
宇宙の原理に立ち返る
私は薬学を学び、分子生物学の視点から臨床を重ねてきました。しかし、医療への疑問が消えることはありませんでした。
病の本質は、自分自身と身近な環境、そして心のあり方に深く根ざしています。医学や技術だけでは見えない、シンプルで本質的な「宇宙の原理」。それこそが、すべての病の起源を解き明かす鍵となるのです。

